中国政府によるチベット仏教寺院〈ラルンガル・ゴンパ〉の破壊について
中国政府による、四川省にあるチベット仏教の大僧院ラルンガルゴンパの破壊が進められている。
これについて分かる限りの情報を要約してお伝えしたい。詳報は各々のリンク先をご覧ください。ただし情報の信憑性はご自身でご判断ください。
日本でいえば高野山や比叡山のようなところ、といったところか。
東チベット(チベット自治区=西チベットに対し、四川省や青海省のチベット圏)最大の仏教都市であり、僧院が建ち並ぶ赤い景観は観光客にも人気であった。
また近くにはアチェンガル・ゴンパという同種の僧院群があり、こちらにも一万人ちかい僧・尼僧が暮らしている。
以下の写真はWikipediaから。
過去には2001年、政府が設定した人口の上限である1400人に削減するため、2000戸程度の家屋が取り壊されている。(New York Times)
今回の破壊措置は6月に出された住居破壊命令によるもので、これによれば2017年9月末日までに人口を5000人に半減させることが示されている。またこの命令には、5000人の排除に至る段階的なプロセスや情報提供の義務が示されている。
これに先立ち5月に、四川省の高官は僧侶に対して、ラルンガルのインフラ整備、社会秩序の安定、僧院の近代化に協力するよう求めていた。
実際の破壊措置は7月に着手され、1日に100~250戸のペースで2000戸近くの破壊が行われたもよう。9月時点で、少なくとも1000人の尼僧がラルンガルから排除された。
また先の命令によれば、10月までには1200人の排除が策定されている。これに先立って僧院側は、9月末に2000人の尼僧に対して自主的に退避するよう求めていた。これが達成されたかどうかは不明であるが、Free Tibetは破壊の状況や、ラルンガルを退避する僧の様子を写真や映像で伝えている。また、退避・帰還した僧は処罰の対象となり、帰還先での宗教活動を禁止されているとHuman Rights Watchの担当者はいう。
【2017年4月5日更新】
4月にも大規模な破壊措置が行われる模様。3225棟の住居が4月末までに撤去される予定であると中国政府が発表している。
このための退去はすでに3月下旬に行われた模様。昨年から3/23までの時点で4828人の僧が既に退去し、三月下旬にも250人の尼僧が退去。
ゴンパの僧院長は「退去した者も退去したかった訳ではなく、自分の意思に反して去っていった。帰る場所があろうがなかろうが、退去させられたのだ。」という。
Tibet Post International 3月30日、"5000 expelled, destruction continues at Tibet's Larung Gar"
今回の破壊措置により、おおむね当初の目標である人口5000への抑制が完了したことになると推測できるが、今後も破壊が続くのかはわからない。
また、退去を命じられた僧は多くがチベット自治区に送還されているという。Human Rights Watchによれば、少なくとも1グループの尼僧が「再教育」として中華人民共和国への愛国教育を受けているという。
HRWが公開したこのビデオでは尼僧が軍服を着て「漢人とチベットは同じ母から生まれた姉妹であり、その母の名は中国である」という意味の歌を歌わされているのだという。
日本においてもラルンガル寺院への破壊への抗議行動は行われている。3/12、Students for a Free Tibet Japanは中国大使館前で抗議デモを敢行し、抗議文を投函している。その全文はこちらから。
破壊の様子はHong Kong Free Pressなどが写真付きで報道している。リンク先をご覧頂ければわかるが、破壊された場所には新しい建造物が作られつつあるのが見られる。。
また、ラルンガルから退去した一部の僧は、同じく甘孜藏族自治州にあるのBelo Riという僧院に身を寄せていたが、そこからも法的根拠もなく、半ば強制的に退去させられているとの由(RFA)。
また、甘孜藏族自治州のある四川省の中国共産党は、地区の官僚に対して、嘘発見器を用いて党への忠誠をテストしているという。168人の幹部が試験を受けたとInternational Campaign for Tibetが伝え、その後を追ってインドの新聞社Hindustan Timesが報じた。対チベット政策への締め付けを強化しているものと見られる。
(日本語・英語しか読めないので)限られた情報しか手に入らないですが、今後も随時アップデートしていきます。情報をお寄せ頂けると助かります。
【関連記事】
ブータンにおける民族浄化:国籍法の変遷から 幸せの国として知られるブータンで行われたあまり語られていない、民族浄化の歴史です。
チベットの環境が重要なわけ
これについて分かる限りの情報を要約してお伝えしたい。詳報は各々のリンク先をご覧ください。ただし情報の信憑性はご自身でご判断ください。
国際NGO、Free Tibet のウェブサイトから。 |
背景:ラルンガルゴンパとは
ラルンガルゴンパ(五明佛学院、ゴンパは僧院の意。)は、四川省の甘孜藏族自治州にあるチベットの仏教都市。活仏であるケンポ・ジクメ・プンツォクが建立した複数の僧院からなり、一万人近い僧侶、尼僧、信者が暮らしている。地理的には辺境に位置するものの、チベット世界ではラサやダラムサラに並んで重要な僧院を構成する。日本でいえば高野山や比叡山のようなところ、といったところか。
東チベット(チベット自治区=西チベットに対し、四川省や青海省のチベット圏)最大の仏教都市であり、僧院が建ち並ぶ赤い景観は観光客にも人気であった。
また近くにはアチェンガル・ゴンパという同種の僧院群があり、こちらにも一万人ちかい僧・尼僧が暮らしている。
以下の写真はWikipediaから。
中国政府による破壊について
中国政府はかねてよりラルンガルゴンパを「分離主義勢力(独立勢力=危険分子)の拠点」であるとしており、「社会秩序に混乱をきたす」として取り壊しを行ってきた経緯がある。過去には2001年、政府が設定した人口の上限である1400人に削減するため、2000戸程度の家屋が取り壊されている。(New York Times)
今回の破壊措置は6月に出された住居破壊命令によるもので、これによれば2017年9月末日までに人口を5000人に半減させることが示されている。またこの命令には、5000人の排除に至る段階的なプロセスや情報提供の義務が示されている。
これに先立ち5月に、四川省の高官は僧侶に対して、ラルンガルのインフラ整備、社会秩序の安定、僧院の近代化に協力するよう求めていた。
実際の破壊措置は7月に着手され、1日に100~250戸のペースで2000戸近くの破壊が行われたもよう。9月時点で、少なくとも1000人の尼僧がラルンガルから排除された。
また先の命令によれば、10月までには1200人の排除が策定されている。これに先立って僧院側は、9月末に2000人の尼僧に対して自主的に退避するよう求めていた。これが達成されたかどうかは不明であるが、Free Tibetは破壊の状況や、ラルンガルを退避する僧の様子を写真や映像で伝えている。また、退避・帰還した僧は処罰の対象となり、帰還先での宗教活動を禁止されているとHuman Rights Watchの担当者はいう。
【2017年4月5日更新】
4月にも大規模な破壊措置が行われる模様。3225棟の住居が4月末までに撤去される予定であると中国政府が発表している。
このための退去はすでに3月下旬に行われた模様。昨年から3/23までの時点で4828人の僧が既に退去し、三月下旬にも250人の尼僧が退去。
ゴンパの僧院長は「退去した者も退去したかった訳ではなく、自分の意思に反して去っていった。帰る場所があろうがなかろうが、退去させられたのだ。」という。
Tibet Post International 3月30日、"5000 expelled, destruction continues at Tibet's Larung Gar"
今回の破壊措置により、おおむね当初の目標である人口5000への抑制が完了したことになると推測できるが、今後も破壊が続くのかはわからない。
また、退去を命じられた僧は多くがチベット自治区に送還されているという。Human Rights Watchによれば、少なくとも1グループの尼僧が「再教育」として中華人民共和国への愛国教育を受けているという。
日本においてもラルンガル寺院への破壊への抗議行動は行われている。3/12、Students for a Free Tibet Japanは中国大使館前で抗議デモを敢行し、抗議文を投函している。その全文はこちらから。
破壊の様子はHong Kong Free Pressなどが写真付きで報道している。リンク先をご覧頂ければわかるが、破壊された場所には新しい建造物が作られつつあるのが見られる。。
また、ラルンガルから退去した一部の僧は、同じく甘孜藏族自治州にあるのBelo Riという僧院に身を寄せていたが、そこからも法的根拠もなく、半ば強制的に退去させられているとの由(RFA)。
また、甘孜藏族自治州のある四川省の中国共産党は、地区の官僚に対して、嘘発見器を用いて党への忠誠をテストしているという。168人の幹部が試験を受けたとInternational Campaign for Tibetが伝え、その後を追ってインドの新聞社Hindustan Timesが報じた。対チベット政策への締め付けを強化しているものと見られる。
(日本語・英語しか読めないので)限られた情報しか手に入らないですが、今後も随時アップデートしていきます。情報をお寄せ頂けると助かります。
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チベットの環境が重要なわけ
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