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一般論や正論ではなく、「わたし」を主語にしたことばを語ります。

2016年11月27日日曜日

危険な大麻の影で、危機にある産業用大麻

大麻を不法に所持して摘発される事件が目立つ。

鳥取では繊維用の大麻を栽培していた農家が密売大麻を所持していたとして逮捕され、
医療大麻解禁を訴えて参議院選に出馬した元女優が大麻所持で逮捕され、
先日は長野県の山間部で大麻を栽培していた22人の男女が逮捕された。


はじめに言ってきたいのだけど、これらは全て違法であって、逮捕されたのは当然だし、大麻取締法やその適用に異議を唱えるつもりはありません。違法な大麻所持や栽培、譲渡はするべきでないし、取り締まりも行っていくべきだとも思う。
大麻が害があるとかないとか科学的な議論は私には分かりませんが、嗜好品として大麻を解禁したときの社会的なインパクトを考えれば安易に解禁すべきではないとも思うし(医療用大麻は別として)、法に科学的な根拠がないと思ったからって大麻の違法な所持が許される訳でもないでしょう。法律がおかしいなら変えるために戦えばいいのに。



だけど、こうした流れの中で、合法的な大麻栽培への風当たりが強くなっていることについては、いたたまれない思いでいます。

合法な大麻とは。
大麻の栽培は、大麻取締法により、都道府県の免許を受けた者は栽培していいことになっています。用途は、主に繊維と、油、食品などです。ほかにも化粧品や石鹸、炭、宗教儀礼などに使われます。
大麻は要するに「麻」ですが、現在はリネン(亜麻)やラミーを「麻」と呼ぶことが多く、実際衣服のラベルもそうなっているので、ここではあえて「大麻(おおあさ)」と書きます。(ちなみに、悲しいことに大麻は「指定外繊維」です。大麻こそ本当の麻なのに!)
大麻は繊維として耐久性や抗菌性に優れた素材で、昔から日本では大麻草が自生しており、衣服や蚊帳、縄に使われていました。麻の実は七味唐辛子にも入っているし、鳥の餌としても使われてきました。
大正期に麻薬としてインド大麻が規制され、戦後は日本の大麻草も規制の対象となりましたが、麻農家には免許を与えることで栽培を許可していました。その後化学繊維などが台頭し、麻産業は急速に衰退し、2014年時点で国内の免許交付を受けた麻栽培者/法人は33、栽培面積は6haになっています。栃木や鳥取や岡山で、細々と国産大麻の栽培が行われています。栽培には県の厳しい管理が条件となっていて、盗難防止の柵の設置や立ち入り検査、収穫数の報告などが義務づけられています。

ところでこうした麻農家の減少を、GHQの責任に帰する言説が多いですが、私は正しいとは思いません。GHQが石油繊維を輸出したいから大麻を取り締まったという説明ですが、実際には戦後に免許交付を受けた麻農家は増えています。理由はむしろ他の繊維が安くて輸入されたとか手間も掛からないから取って代わられたという方が適切な気がします。


ご存知の通り大麻は薬物とされていて、これは主にTHC(テトラヒドロカンナビノール)と呼ばれる成分の陶酔作用や中毒性が根拠です。ほかにCBD(カナビダイオール)という成分も主要な成分として存在しており、この薬理作用が医療大麻の根拠となっています。ただ、繊維用に栽培されている大麻はこのTHCもCBDもほとんどありません。産業用の大麻を吸引したところで、煙たいだけです。
ところで栃木県ではこうした成分が極端に少ない品種を開発しており、盗難防止の柵を設置しなくても栽培できるようになっていますが、種は栃木県が一括管理しています。


さて、先日の事件を受けて、厚生労働省は【ご注意ください! 大麻栽培でまちおこし!?~大麻の正しい知識で正しい判断~】 というパンフレットを作成した。PDFで配付されている。
簡潔にまとめれば、「地域おこし」を謳い文句に大麻栽培を自治体に持ち込むケースが増えているが、実際には大麻栽培は大変だし、大麻愛好者の巣窟となるから注意しなさいよ、大麻はこんなに危険な薬物ですよ、という内容だ。県名は伏せられているけど、先日の鳥取の事例が冒頭の3頁に紹介されている。引用してみよう。
  T氏は、地域活性化を謳い文句に町協力のもと免許を取得し大麻栽
培に乗り出した。T氏はネット等で大々的に大麻栽培をアピールし、
栽培体験ツアーも実施していた。だがT氏の正体は大麻愛好家であり、
次第に全国の大麻愛好家たちがT氏のもとへ集まる事態となった。
 結局、T氏は嗜好目的での大麻所持が発覚し、大麻取締法違反で検
挙され、その後、免許取消しとなった。
事実ではあるのだけど、これは産業用の大麻と嗜好品の大麻があたかも同一のものであるような書き方ですね。だけど、「T氏」が所持していた大麻は違法に密輸されたものであって、決して自家栽培したものではありません。
ところでT氏こと上野氏は「八十八や」という法人で、鳥取県智頭町と協力しつつ大麻を無農薬・無化学肥料で栽培しており、オーガニクヘンプとして智頭麻をブランド化して売り出していました。こういう町おこしの功績を、単に大麻栽培のための「謳い文句」として片付けてしまうのも片手落ちな印象があります。

しかも、この事件が表しているのは、T氏のような大麻愛好家であっても、県の管理下に置かれているから、自家で栽培した大麻を嗜好品として用いることはできないのだということでしょう。この点では、むしろ行政の管理が徹底していることが読み取れるのではないだろうか。

鳥取県知事は、この事件を受けて産業用の大麻も全面的に禁止する方針を打ち出している新聞記事を参照。ここで平井知事は「取り締まってもすり抜けられる」と言っているが、これは正しくないと言えます。栽培者は制度をすり抜けたのではなく、一般の愛好家と同様に密売品を入手したのだから。要するに、産業用大麻に危険な点があるのではなく、栽培者個人の問題だったですが。


こうした産業用大麻と危険な大麻の混同は、看過しがたいと思います。真剣に大麻を栽培している麻農家の誠意を無に帰すことだから。

大麻は、リネンやラミーと比べ、農薬や化学肥料が要らず、比較的土壌の養分を必要としない(よって休耕の必要が無い)ので、環境に優しい繊維として注目されています。
また、麻は古くから日本にあり、身近な植物でしたし、麻は清い植物として、神事にも用いられてきました。麻の葉をモチーフにした文様である麻葉模様は、誰もが見たことがあるでしょう。



こうした日本の伝統の復活させたい、自然素材として大麻を活用したいという思いから、真剣に麻を栽培し、麻の復権に取り組んでいる人も多いのです。実際、麻の栽培、特に夏場の収穫作業は重労働です。免許の取得も含めて、簡単にできるものではないし、それが危険なものでもありません。
大麻の生地(ヘンプ)にこだわった服屋さんも最近では増えてきています。自然にやさしく、人の肌にやさしい大麻の魅力を伝えたいという思いの服屋さん、私の周りにもいらっしゃいます。ヘンプ100%はかたくてごわごわして着づらいので、綿と合わせた生地が多いのですが、ナチュラルな雰囲気のある優しい素材感に惹かれる人も多い。
繊維用の大麻まで悪者扱いしないでほしいし、麻農家や、大麻繊維を使った製品を作っている人に誤解や偏見が向けられることのないことを願っています。


問題は、医療大麻や産業用大麻の活用を推進するべき人が、嗜好品としての大麻とは一線を画することで、説得力をもって推進できるのに、違法な大麻の使用をしている点でしょう。
実際、薬物として大麻に興味を持った人が、大麻の歴史的な重要性や活用の可能性に興味を抱き、活用を推進していくということが多いという構造的な問題もあると思います。ときに彼らは大麻の全面的な解禁論者であったりもします。

ここでは大麻が違法であることの是非は擱くとしても、大麻=悪という言説ができあがっていくことには危機感を感じます。産業用大麻と違法薬物の大麻の線引きを取っ払った上でそれらがまとめて「大麻」として、危険とか悪者扱いされていくのは悲しい。はじめから大麻は危険なもの、いけないものと決めてかかってその枠組みのなかで全てを判断しないようにしてほしいと思います。

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