このブログについて(自己紹介)


一般論や正論ではなく、「わたし」を主語にしたことばを語ります。

2017年4月3日月曜日

これから卒論を書くICUの学生のみなさんへ

 わたしが四年生になったときに知っておきたかったことや、後輩に伝えたいことなどを、まとめておきます。あくまでわたしの個人的な見解です。わたしは就活はしなかったのでその辺のことは書けません。
 たんなる老婆心で書いてますので、お節介かもしれません。

 ちなみにわたしは人類学と歴史学のダブルメジャーでして、山形県村山地方の「ムカサリ絵馬」をテーマに卒論を執筆しました。これは独身で亡くなった人の供養として、あの世で結婚して幸せになってほしいという願いを込めて、個人と架空の結婚相手の結婚式を描いて納めるものです。二度のフィールドワークを含めた調査を行い、「「ムカサリ絵馬」と死者供養の人類学的研究:頼る死者と贈る生者の民族誌」という題名でまとめました。興味があれば図書館で閲覧してみてください。


①卒論は楽しい。
 すくなくとも私は、卒論に取り組んでいる1年間は本当に楽しくて充実した日々でした。本当です。自分の興味のままに調べたり考えたりして、先行研究にも書かれていない=誰も知らないことを発見していく過程はつねにワクワクしていましたし、現地調査で色々なひとと出会ったのはかけがえのない経験でした。
 自分の関心のあることについて、自由に調べて、考えて、論じることのできる機会なんて、ほとんどのひとは学生のうちしかないでしょう。そのための環境も整っているし、それを指導してくれる先生もいるというのは本当に恵まれたことだと思うので、思いっきりその機会を活かしてみてはいかがですか。
 「学生のうちしかできない!」とかいうしょーもない広告に煽られて、就活のためのアリバイ作りさせられるよりも、そっちのが絶対いいと思いますけど。
 卒論に苦しんでいる先輩もいますが、それを見て卒論は面倒なものだと最初から決めてかからないように。一年間を損しますから。



②がんばれば賞が狙える。賞金も出る。
 寄付金をもとにFriends of ICU 学術奨励賞 というものが設定されていて、各分野のすぐれた卒論・修論が表彰される制度があるのです。賞金は5万円。卒業式後に授与式があります。自信作が書けたら指導教員に推薦してもらいましょう。
 わたしも2016年度の長清子アジア研究学術奨励賞をいただきました。賞金は有意義に使わせていただきます、と言いたいけど生活費にしかならないでしょうね。。。


③調査費用は学生サポート資金に助成してもらう
 これは卒業するまで知らなかったのですが、日本国際基督教大学財団(JICUF)が学生サポート資金というのを用意しています。学生の研究または社会貢献・奉仕活動のための旅費や、学生主催のイベント・活動をサポートする資金を提供してくれます。
 つまり卒論の調査費用をここから調達することができるのです(もちろん、審査に通ればの話です)。今年の春期の申請は5月12日まで。早めに計画して申請しましょう。
 

④仲間は多い方がいい
 「卒論はチームワーク」——K先生
 ささいな疑問から大きな問題まで、聞いたり相談できる友達をなるべく多く作ること。私のゼミはLINEグループがあって、書き方や出典注の入れ方とかwordの使い方とかはそこで聞けば誰かが答えてくれました。ICUは(公式には・定期的な)ゼミがないのが問題なんですが、議論を展開していくためには対話が必要なこともあります。なるべく似たような関心を持っている人と情報を共有していると行き詰まったときに解決の糸口を与えてくれたりもします。締切間際になって焦っている時に「助けて!」と言える相手、日頃から刺激を受ける相手を見つけておくといいです。
 私のいたM木ゼミの仲間は本当にありがたかったと思います。今でも感謝しています。M木ゼミは「ICUの下半身」とか言われてますけど。。。


⑤図書館を使い倒す
 図書館ホームページの「サービス一覧」のところは少なくとも見ておきましょう。
 欲しい本があったら制限なくリクエストできるし、リクエストしないと図書館予算が減らされてしまいます。TACや提携校にない図書なら、たいてい買って貰えます。希望の理由は「卒業論文のため」と書けば十分です。
 データベースやCiNiiで論文を探してもフルテキストが見つからなければ論文コピーの取り寄せ(300円)もできるし、ICU図書館や提携校にない本は他大学の図書館から借りる(だいたい600円くらい)こともできます。お金はかかるけど、交通費を掛けて国会図書館に行くよりはずっと安いですよ。
 資料の種類によっては公共図書館も使えます。歴史や民俗にかんするものは公立図書館が郷土資料室を持っていたり、地元の研究者の寄付した蔵書が文庫になっていたりします。
 国会図書館だけじゃなくて、東洋文庫とか歴博の図書館もお世話になりました。
 あと、博物館の非公開の資料も交渉したら見せてくれる場合もありました。


⑥時間には余裕を
 卒論は提出期限を過ぎると一切受け入れて貰えないのはご存知かと思います。私のゼミでは提出間際に警察に職務質問されて時間を無駄にする人もいれば、失恋して一ヶ月動けなくなる人もいました。。人生は本当になにがあるのか分からないので、、、
 時間に余裕があれば、迷ったときに問いを立て直すこともできます。そうした方が、結果としていい論文が書けたり、納得のいく答えがみつかったりするものです。

 そして、まだ時間に余裕のあるうちに好きな本や読みたい本は読んでおいたほうがいいです。院試や卒論で好きな本が読めないのが一番辛かったです。日頃から本を読んでおくと卒論に役立つかもしれませんよ。わたしが「ムカサリ絵馬」を知ったのも本からの知識ですから。


⑦とにかく書く!!
 考えてばかりいないで、とにかく書きましょう。考えているつもりでも実は考えがまとまっていなかったり、ちょっとしか考えてないことでも書き出すうちに考えが深まったりするものです。
 自分が何を考えているのは、書くまでわからないものなのです。。。

 私は文献を読みながらノートを(PCに)取って、疑問や批判や重要点の要約とページ番号を書き留めていました。ページ番号を書いておけば本文に引用するときに探さなくていいから楽です。
 結果としては論文に使わなくても、書いたことは無駄じゃないので、書くことは面倒くさがらないこと。


⑧アドバイザー選びは大切
 一年間一緒に論文を書く伴走相手になりますから、相性とかも考えて選びましょうね。学生を放置してる先生も結構います。結局、自分の関心のあること、自分の調べたいことに取り組むのが持久力につながります。わたしもあの指導教員でなければ、ここまで自分のやりたいことを見つけてそれに向かってまっすぐ進むことはできなかっただろうな、と思います。先生には感謝の思いが尽きません。


⑨大学院進学を考えている方へ
 希望進路決定は早い内にしましょう。わたしは専攻をどうするかでかなり迷ったので決めるのが遅くて、6月中旬に希望が決まったんですが、その後すぐフィールドワークに行って帰ってきたのが8月中旬。大学院の入試が9月中旬で、一ヶ月で詰め込むように勉強しました。精神的にも肉体的にも辛かったです。思いっきり体調を崩しました。帯状疱疹が出たり、盲腸になりかけたりしました。もっと余裕をもって決めることができたら。。。。
 まぁ、受かったから良かったんですが。

 で、決めるにはどうしたらいいかというと、相談することです。大学のウェブサイトには教員のメールアドレスが書いてありますから、「こういうテーマに関心があるのだが、そちらの研究室では研究ができるか」という旨のメールを出してみましょう(もちろんその教員の研究実績を見た上で。)。可能ならゼミ見学をさせて貰いましょう。大学選びよりも指導教員選びが大切です。入ってみて自分のやりたいことができなかったら悲惨だし、、、できない研究はだいたい2次試験(面接・口述)で落とされますので。それに、面識のある相手なら面接試験も楽になりますから。
 教員に直接メールするほどの関心にまでいかないのであれば、そこに進学した先輩に聞いてみるのもいいと思いますよ。某国立大学の社会学研究科なら私に相談してくださっても構いません(社会学研究科のある国立の大学院はひとつしかない)。専攻が違っても知り合いとか紹介できるかもしれませんので。

 また、大学院(たとえば東京医科歯科大のMMAとか)や教員によっては、出願前に教員に相談することを求められる場合もあります。早めに動かないといけなくなります。

 あと、私は1次試験の筆記で落ちたと思っていたんで、結果が出るまでものすごく落ち込んでたんですが。落ちてませんでした。勝手に落ちたと思い込んで落ち込まないように。落ちたと思った人はだいたい受かってるらしいです。


⑩図書館のデータベース講習会には3年生までに参加する
 図書館は毎月、契約データベースの講習会をやってるのはご存知だと思います。毎月異なるデータベースの講習会をしているので、1回逃してしまうと同じものは1年後でないと受けられないか、次の年にも行われないか。。。自分の学問分野に合わせたデータベースや、日本語論文の探し方、Google Scholar、RefWorksなどは重宝します。もちろん普段のレポート執筆などにも役立ちます。4年生になってからでは遅いこともあるので、3年生のうち(あるいはその前)に参加しておくのがいいでしょう。


⑪他流試合に行く
 自分のアドバイザーではなくても、頼めばゼミに参加させてくれるかもしれません。私は自分のゼミ以外にも歴史学のゼミに2つ出席していました。分野は違っても似たようなテーマを扱っている人がいて、学ぶことが多かったです。なにより自分のゼミよりも優秀な方がたくさんいたので・・・。自分のゼミでは解決できない問題もほかのところなら解決してくれるかもしれません。
 

【フィールドワークをする方へ】

①(人類学では)単純に自分の好きなこと、やっていること、自分に関係があることはテーマにしずらい。
 たとえば在日コリアンの方が在日コリアンのコミュニティを研究するのはとても難しいでしょう。それまでその人が見てきた世界があって、自分では気付いていない「当たり前」の世界があって、それを客観的に言語化するのはかなり難しい。
 私は入学前に鍼灸師の資格を取ってるんですが、それを研究テーマにするには私は鍼灸のことを知りすぎていました。かなりバイアスがかかることは分かりきっていたので、卒論のテーマにはしませんでした。


②フィールドワークには拠点が必要
 どこかに滞在してフィールドワークをするのであれば、その地元に根を張れる場所が必要です。私は山形ではゲストハウスに滞在していたので、そこのスタッフの方の知り合いを紹介してもらったり、地域の方と交流ができて調査はかなりしやすかったです。
 青森でもフィールドワークをしたんですが、ここではウィークリーマンションに泊まっていて、調査地まで車で行ってインタビューをして宿に帰るだけだったので、結局地元に溶け込めないまま調査が終わってしまいました。結果として、青森での事例は卒論には一切書かなかった。忙しい時間を割いて協力して下さった方を思えば、断腸の思いです。
 拠点だけじゃなくて、地方に行くなら車は必要だし、お金も、心理的余裕も必要です。
 私は二回(1ヶ月半+10日)の調査で40~50万円くらい使ったかな(飲食費……飲み代も含めば)。だけどそれを費やす価値はあったと思います。


③関係ないかなと思っても、(時間があれば)調べてみる
 関係ないかなと思っていても、じつは関係があったりします。わたしは卒論で、山伏のことはなんとなく関係ないかなと思って放置してたんですが、指導教員に「時間もあるし調べてみたら?」と言われ、調べてみたら本当に思わぬ発見がありました。この学問的貢献が賞の推薦理由のひとつになったくらいです。
 調べてみて、上手くいけば1節、いかなくても1パラグラフ、あるいは脚注くらいは書けるかもしれません。結局は使わなかったとして、調べたことは無駄にはなりませんよ。


④録音はしっかり
 一度、録音ボタンを2回押してしまって停止状態になってたことがあったんです。2時間ちかいインタビュー、録音できてなかったんです。。。ちゃんと確認しましょう。
 同意書とか録音を頼むと身構えられることも多いです。そんな大したことはなさないよって。でもこっちには、大したことない子どもの頃の思い出話が重要だったりするんです。しっかり頼みましょう。
 場合によっては、「いやぁ、最近はデータの捏造とかがうるさくて、取るように言われてるんですよねぇ、お願いします」みたいな頼み方も使えます。 


⑤知っていそうな人にはとにかく連絡してみる
 地域の人、お坊さん、関係者、先生、先輩・・・だれでもいいです。とにかく連絡できるなら連絡してみましょう。
 私は人見知りでして、知らない人に電話を掛けるのは本当に苦手で、怖くて震える手で電話を掛けたりしてましたけど。そうやって電話をかけたすべての人と、話してよかったと思っています。冷たくあしらわれたことは一回もないし、論文に役に立っただけではなくて、ひとの暖かさにふれたり、訪問したらお菓子を出してくれたり。良い経験でした。
 もちろん礼儀は忘れずに。
 ICUの方は大学名を言うと(特に知名度の低い地方では)警戒されることもあると思います。でもこちらが誠意と熱意を見せればちゃんと分かって貰えます。大丈夫です。



卒論は四年間の学びの集大成です。ぜひ納得のゆくまで考え抜いて、いい論文を書いてください。
そして、わたしに力になれることがあればなんでも相談してください。右上の、公開しているメールアドレスに連絡をいただければ返事します。

また、ここに付け加えたいことがある卒業生のかた、コメントくれれば書き足します。

0 件のコメント:

コメントを投稿